株式会社フェイス

Face to Faith

フェイス・グループに新参画レーベル事業の一翼を担うKSRが果たす役割

フェイス・グループに新参画  レーベル事業の一翼を担うKSRが果たす役割

2019年10月、ダンスミュージックを中心としたアーティストの輩出、楽曲制作、プロモーション、イベント関連など、多岐にわたってエンタテインメント事業を展開する株式会社KSRがフェイス・グループに加わった。グループ参画にあたり、「新たな体制で、よりスケール感のある発想と問題提起を行い、飽和状態の音楽業界にイノベーションを起こそうと本気で思っている」とのコメントを寄せた、新羅氏の今の想いに迫る。

新羅 慎二
  • 株式会社KSR
    取締役副社長
  • 新羅 慎二NIRA SHINJI

2003年、湘南乃風のメンバーとしてデビュー。

2011年より「若旦那」名義でソロ活動をスタート。自身のアーティスト活動の他に、プロデュースや作詞という形で、加藤ミリヤ、関ジャニ∞、JAMOSA等さまざまなアーティストの作品に参加。

音楽活動以外にも漫画原作、雑誌連載、イラスト、絵画、俳優へと表現活動の幅を広げているほか、難病患者支援や震災被災地支援の活動も継続的に行っている。

2015年、株式会社KSRの4代目・代表取締役社長に就任。

2015年にKSR4代目社長に就任

株式会社KSRは、2000年に株式会社クラブミュージックディストリビューションとして事業活動を開始した会社が前身で、湘南乃風もメジャーデビュー前、自主制作盤をタワーレコードやHMV等に流通してもらう契約をしていました。当時、KSRと契約することは、インディーズにおける登竜門であり、KSRに認められることがメジャーへの第一の扉を開くという感じでした。デビュー後、僕は自分自身のマネジメントやレーベル事業、イベント開催等を手掛ける会社を経営していたんですけど、今から6年前、事情があってその会社を手放すことになったタイミングで、ちょうどKSRから新しい事業体を立ち上げるからぜひ力を貸してほしいと請われて、4代目の社長に就任しました。僕はただ、会社をなんかいい雰囲気にしたいって思っていて(笑)、そこから徐々に、ヒップホップのジャンルが好調になってきたり、僕自身の活動では、さだまさしさんにコンサートに出ていただいたり、俳優としてのキャリアがスタートしたりと、続々と新たな道が拓けていきました。そうこうしてたら、一昨年、フェイス・グループから一緒にやらないかと声をかけてもらったんです。

フェイス・グループに新参画  レーベル事業の一翼を担うKSRが果たす役割

フェイス・グループへの参画は即決

声をかけてくれたのは、かつて湘南乃風のチーフプロデューサーをやっていた三浦剛史(現KSR社長、当時はドリーミュージック社長)で、「もう一度、新羅と一緒にやりたい」と言ってくれて。一時期、すべてをともに作り上げていた三浦は、僕にとっては親みたいな存在だったし、KSRにとっても、もう一段、別のステージでやってみたら面白いだろうという確信があったので、フェイス・グループに行くことを決めました。三浦と一緒にやりたいという想いだけじゃなくて、自分たちがやりたいと思っていることと、フェイス・グループの一員として協力できそうなこととの補完関係もイメージできて魅力だったんです。フェイスはハード(いわゆるプラットフォーム)を創ることが上手な会社という印象で、ここだったら自分たちのクリエイティブを存分に発揮して、創りたいソフト(コンテンツ)制作に邁進できると考えた。さらに言えば、KSR単体では限界を感じ、ぶち当たっていた壁もあったので、フェイスの東証一部上場企業という力を持って挑戦できることもある、その中で思い切り泳いでみたい、という想いもあり、ぜひやらせて欲しいと即決しました。

新しい技術の活用は、音楽マーケットに構造変化をもたらすか

フェイスが、ブロックチェーン技術を音楽マーケットに取り入れたら何が起こるのか、というような可能性を探っていると聞いて、ものすごく魅力ある取り組みだと期待しています。僕も同じような考えを持っているけど、実際のところ、大きなシステムや枠組み、産業構造を変えるのはなかなか難しい。実は音楽業界ってめちゃくちゃ保守的で、みんなが見合って見合って、誰かがやって初めて自分も乗っかってみようっていう風潮がわりと強い業界なんですよね。最先端技術が大好きっていうわけじゃないし、そういう新しい気運はまだまだ高まっていない。一方で、アメリカや中国から入ってきたシステムをみんなが使うようになって、それでようやく日本の音楽業界も追随するという流れはよくあって、Spotifyなんかがわかりやすい例ですよね。そこから同じようなサービスを立ち上げて国内のシェアを取っていこうとしても、もう「時すでに遅し」でしょう。本当はプラットフォームを提供する側とアーティスト側とが同時に動いていけば、早いんじゃないかとは思うけれど、ミュージシャン側もきっと面倒くさいんですよ。基本、ミュージシャンて音楽を作れるだけで満足っていう人が多いから。僕はラジオなんかでもこういう発言をしているから、アーティストを代表する団体とかユニオンを作ってくれとか、よく言われるけど、僕だって本来は音楽を作っているのが好きな人間なんで、それを自分でやるくらいだったら、音楽作らせてくれって思うし(笑)。だからこそ、フェイスのような新しい仕組み作りを進めてくれる会社には、期待しているんですよ。

フェイス・グループに新参画  レーベル事業の一翼を担うKSRが果たす役割

プラットフォーマー×キュレーターの共創が求められている

アーティストからユーザーにダイレクトにコンテンツを届けられるD2Cは、確かに重要なビジネスモデルだと思っています。でも、エンタメにおいては単にそればっかりだと、誰でも発信できるようになるから、「オール表現者」になっちゃうんですよね。それは、YouTubeを見てもわかるように、あまりに玉石混合で、逆に不便になったり、好きな音楽に出会いづらくなってしまう可能性も大きくなる。これまでの音楽シーンには、インディーズ、その先にメジャーレーベル、メジャーの中でもプライオリティって道筋があったけど、スポーツで言うところの地区予選、全国大会、その決勝戦みたいなもので、それはそれで価値があったと思うんです。つまり、それぞれの段階にキュレーターがいたってことなんですよ。ユーザーはアーティストの前に、まずレーベルというキュレーターにつくところから始まるわけで、かつてはレーベルにも確固たる色があった。最近は、「数字が付きそうなものは全部獲得しろー」みたいな感じでアイドルから韓流から全部やっちゃって、どこも色がなくなってしまった。
D2Cのプラットフォームも、ユーザーから信用してもらえるものにするためには、そこで、どういったキュレーターたちが、どのような作品を並べるのかという視点が絶対的に重要になってくると思います。だからこそ、フェイスが創るD2Cのシステムに対しては、僕らはキュレーターとして機能していきたいと考えています。システムやプラットフォームも、いいものを作れば勝手に使う人が増えるわけじゃない。例えば、ゲーム機だって、どんなに機能が優れていても、遊べるソフトに魅力がなかったら売れないわけで、ハード(プラットフォーム)とソフト(コンテンツ)と一緒にローンチすることが大事だと思うんです。これからは、コンテンツホルダーとプラットフォーマーどちらが主導権を握るかということではなく、共創こそが生き残る道です。だからこそ、プラットフォームの創出を手掛けつつ、キュレーション機能を果たすレーベルが一体となって動けるフェイス・グループは、とても有利なんです。

日本コロムビア×ドリーミュージック×KSR
3つのレーベルを横断する共創事業でグループシナジーを最大化したい

KSRはヒップホップだけじゃなくて、フォークや役者部門を持つことで、あるシーンが傾いても互いに支え合えるようなバランス感を持ったレーベルでいることをすごく意識しています。あとは、僕たちは新人発掘がめちゃくちゃ得意です。ずば抜けてうまいと思う。今、グループ内で日本コロムビアとドリーミュージックとKSRのレーベル3社が競い合っていますけど、将来的には、例えば、僕たちが見つけてきたアーティストについて、流通は、全国各地に販売網を持っているコロムビアがやってよ、宣伝はテレビに強いドリーがやってよ、みたいな感じで、3社各々の強みを生かした横断プロジェクトみたいなものをどんどん増やしていきたいですね。自社のアーティスト数や楽曲数が多ければ、プレイリストに対する発言力も大きくなるわけで、サブスクリプションサービスにおける影響力に直結するし、A Iへのアプローチや解析をひとつの大きな集合体としてまとめて行っていくことで、初めてムーブメントを起こすことができる。そこまで考えて舵取りをしていくこともグループとして必要になると思っていて、実はすでにその方向でいくつかプロジェクトが始動しています。今後、どんどんコロムビア、ドリー、KSRの3社の機能をごっちゃごちゃにシャッフルしながら、共創事業などの新しい動きを加速させていくことを恐れずにやっていきたいと思っています。

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日本発コンテンツのアジア展開を目指す

もう1つ、僕らがフェイス・グループの一員として挑戦したいことがアジア展開で、僕らKSRがアジアとの窓口を担うことで、補完関係を強化できると考えています。アジアって皆さんが思っている以上に、独裁国家が多いんですよ。中国だけじゃなくて、シンガポールだって、ベトナムだって、カンボジアだって一党独裁体制。今まで日本のレーベルって、一担当レベルでアーティストをアジア諸国に売り込みに走っていたようなところがあるんだけど、それじゃ絶対に相手にされないし、通用しないんです。KSRもこれまでも何度かアプローチしてきたけど、一個人や小さな会社の力では突破できなかった歯痒さ、限界を痛切に感じてきました。でもその一方で、スケジューリングや移動についてはフレキシブルに、フットワーク軽く行かないといけない。だから、グローバル企業と対等に仕事をしてきた、東証一部上場のフェイスっていう大きな看板を背負って、身軽に動けるKSRが乗り込んでいく。そうじゃないと絶対に勝負にならない。大きな看板をバックボーンに、フェイスになかった恐れ知らずの「イケイケ」感を発揮しながら(笑)、新たな突破口になる!!という気概で機会を探っています。

フェイスの企業理念と行動指針への共感

フェイス・グループに参画してみて、改めて企業理念「あるものを追うな。ないものを創れ。」は完全に体現されているし、その熱はめちゃくちゃ感じています。そのうえで、創ったものをどう世の中に落としていくか、浸透させるためには何が必要なのかという点については、もっとやれることがたくさんあるように思います。そして、僕らは、そのローンチ力の部分で役立てる自信がある、だから、まずはグループ内での発言力を高めていかなければいけないなと思っています。
また、5つの行動指針のうち、「CREATE〜社会を豊かにする独創的なアイデア」に大きく共感しています。それは新しいものを創るということだけでなく、世の中がより良くなるように、新しい価値を創造し続けるということも大事だと思っています。だから、環境問題をテーマにした音楽作りなんかも率先してやっていきたいし、音楽とかアートがもう少しメッセージ性を持ってもいいんじゃないかとも思っています。色恋の歌ばかりじゃなくて、例えば、色恋の曲が1位だったら、社会的なメッセージを伝えるような歌が2位になるくらいなバランスにしていけたらな、と。世界中で経済的発展がすべてだった時代が終わりを告げつつある今、僕たちは政治家じゃないから、経済活動の一端で世の中と接しているわけだけど、その中で、いかに自分の活動で世の中に貢献していくかという視点が絶対に必要になってくる。経済成長のパーセンテージアップだけがすべてっていう考え方を改めていくこと、そうじゃない商品作り、そうじゃない会社作り、そうじゃない体系作りっていうのが、新たな価値を創造するCREATEなんじゃないか、と思っています。だから、フェイスの株主の皆さんにも、数字面でいくら儲かったかを価値とするだけでなく、「何をやったか」「社会に何をもたらしたか、どう貢献したか」を見て欲しいし、価値の創造、CREATEに着眼していただけたらうれしいです。それが社会の中に空気というか、匂いみたいなものとして入ってくると、みんなもっと楽になって、結果的に収支の面でも新たな利益をもたらすビジネスが生まれてくることにつながると思うんですよね。そういう世の中をCREATEしていきたい、社会貢献っていうのは、そういう価値の創造までいかないと意味がないと考えています。だから、KSRのスタッフに対しても、はじめから黒字狙わなくてもいい、大事なことをやっていれば価値が生まれるから、と教育しています。経済活動だけを追うのは、シーソーで言えば、ずっと片側が沈んだままになっちゃうわけだから、ジメーって感じになって希望もないし、面白味もない。とはいえ、金銭的担保を持たないで挑戦している人はクリエイターでもないし、チャレンジャーでもないと思う。持ってない人は、それを自認して、持っている人の下について機会を伺うべき。絶対に日銭を稼げるコンテンツを持ちつつ、世界をより良くするものを創ることに重きをおいた「CREATE=価値創造」を追求する、このバランスを持って活動すること、それが本当に大事なことだと思っています。

フェイス・グループに新参画  レーベル事業の一翼を担うKSRが果たす役割

マーケットインのタイミングを見誤らない

売れるものって、だんだんわかってくるんですよ。それは0から作るわけではなくて、売り時のタイミングを捉えることが重要で、「ああ、これ来るな」っていう時を逃さずマーケットインすればいい。逆に言えば、はじめからマーケティングしちゃいけないってことです。まずは、自分たちが格好いいと思ったことをひたすら信じてやり続ける。それに時代がついてきて、来る、来る、来るっていう時に、めちゃくちゃマーケットインなものを出すから売れるんですよ。それなのに、0の時点でマーケティングの話をする人が多過ぎるから、いいものが作れなくて前に進めなくなるんです。物事には順序があって、まずは好きなこと、格好いいって思っていることをとことん信じてやる。そこには他人を納得させる裏付けなんて必要ないし、逆に周りは、そういう奴らの背中を押してあげるべきだと思う。マーケティングって、麻薬というか、特効薬みたいなもので、世の中が「あそこの会社はしっかりマーケティングができているから売れているんだよ」とか、みんなが囃し立てるから、マーケティングが全てだ、神だ、みたいに思っちゃっている人が多いんだよね。でもそれは違う。CREATEが神なんです。マーケティングだけじゃ何にも生まれない。「そんなの誰も格好いいって思っていないよ」って言われても、「俺は格好いいと思っているんだ」っていうことをひたすらやり続ける。それはひとつのことに固執し続けるってことじゃなく、「常に今、自分が格好いいと思うことを追い続ける」ってことで、そうしているうちに着実に積み上がって、何となく人が集まってきて、じわーっと広がってきて、マスになりつつあるここぞという時に思い切りマーケットインする、そうすると爆発するっていう手法なんですよ。ちなみに、大ブレイクにたどり着かなくてもやり続けていたら、「燻銀」っていうジャンルが確立されることもあります(笑)。

共創事業の先に描く、さらに大きなもの

僕が今、グループに提案しているのが、「ラジオコミュニケーション」です。僕たちは、コラボーレーションしたい人がいたら、ラジオ番組のゲストに呼んで「やりましょうよ」って言うんですよ、電波上で。そこでフェスの出演交渉したりしてね。その発想をビジネスフィールドにも使えないかなって思っていて。以前、一緒にラジオ番組を作っていた人が、今なんとフェイスで仕事していて再会したんです。だからすぐにでもできる(笑)。まずは、「FM Faith」っていうグループ内のラジオコミュニケーションからスタートさせたい。本当は、館内でずっと流れているっていうのが理想なんだけど、コロナ禍でリモートワークになったから、今はなかなか難しい状況ですけどね。でもそういった、インナーコミュニケーションの活性化にも風を吹かせたいから、時期を見計らって検討したいと思っています。
あとは、個人として、音楽に貢献したいっていう気持ちはずっとあって、ポップミュージックに対する水物、水商売みたいな見られ方を払拭させて、芸能という格へ押し上げる作業をやりたいですね。太古からお祭りの歌と踊りは神様への奉納だったわけで、僕たちもそういう気持ちでミュージシャンをやっている、そのくらいのプライドを持って音楽を作ってますから。教育の世界でも日本の音楽史であったり、各レーベルの成り立ちとかポップミュージックの歴史なんかを学ぶ、音楽学みたいなものがあってもいいんじゃないかな。それぐらい国家事業として本気でやれば、豊かな文化も育つし、マーケットは死なないし、歌舞伎みたいに受け継がれていく芸能になるんじゃないかな、って。

フェイス・グループに新参画  レーベル事業の一翼を担うKSRが果たす役割

フェイス・グループ行動指針

CREATE / 創造
社会を豊かにする独創的なアイデア。
CHALLENGE / 挑戦
新しいことにスピード感をもって取り組むチャレンジ精神。
COLLABORATE / 協力
グループ内外のさまざまなパートナーとの協力・協業。
FAITH / 信頼
人と人、企業と社会とのつながりを尊重する。
NEUTRALITY / 中立
特定分野・業界にかたよらず、常に視野を広げる。

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